スウェーデンの肉じゃが的存在!?「ヤンソンさんの誘惑」
ヤンソンさんの誘惑(Janssons Frestelse)これはスウェーデンの定番家庭料理の名前なのです。
一度聞いたら忘れられなさそうな料理名ですよね。
別名には「アンチョビポテトグラタン」と付いている通り、じゃがいもとアンチョビを使ったシンプルなオーブン料理です。
家族や友人が集まる時のおもてなし料理として出されることも多いらしく、季節を限定するメニューではないながら、クリスマスには欠かせないとも言われる存在の料理なのだそうです。
日本食だと何に該当しそうかしら?家庭料理の代表格であり、アレンジ次第ではおもてなし料理にもなり得る、 肉じゃが、というところでしょうか。共にじゃがいもを使う料理という共通点もありますね。
名前の由来は諸説あるようですが、菜食主義の宗教家ヤンソンさんが、その美味しそうな見た目と匂いの誘惑に負けてつい食べてしまったという説が、まるでその光景を思い浮かべることができるような気がして個人的には好きです。
オイル漬けではない!?スウェーデンのアンチョビ缶詰
とてもシンプルな料理なので、この料理の味を決めるのは、アンチョビだそう。
ところがスウェーデンのアンチョビの缶詰は、日本のスーパーで買えるアンチョビの缶詰とはどうやら全くの別物のようなのです。
日本で買えるものはイタリアやスペイン産の塩気の強いオイル漬けの缶詰が主流ですが、スウェーデンのものはハーブを効かせてマリネしてあるそうで、インターネット上で見つけられる画像からは、缶を開けた時の見た目もかなり違うのがわかります。
オイル漬けのアンチョビは茶色っぽい見た目ですが、スウェーデンの缶詰の中身はもっと生っぽく、見た目だけで言うならば、北海道の郷土料理としても有名な「ニシンの酢漬け」に近いような雰囲気です。
オイル漬けとマリネではずいぶん味が違うでしょうから、アンチョビはアンチョビでも、どのアンチョビを使うかで、きっと仕上がりの味はかなり異なるのではないかと想像できます。
とは言え、日本のスーパーなどでスウェーデンスタイルのアンチョビ缶詰を手に入れることはほとんど不可能のようなので、馴染みのあるオイル漬けのアンチョビのほうで、ヤンソンさんの誘惑を作ってみることにします。
スウェーデンのABBA社のアンチョビ缶詰にはオールスパイスやシナモン、ナツメグなどが入っているようなので、多少本場の味に近づけるかもしれないという希望を持って、それらのスパイスも加えてみることにします。
材料さえ揃っていれば作り方は簡単なので、お洒落な名前のわりに気軽に作れちゃうのは魅力です。
IKEA のSILL DILL(ニシンの酢漬け)をアンチョビ缶詰の代わりに使ってみる!?
今回のヤンソンさんの誘惑は、グニラさんをご招待するザリガニパーティーの際に出してみようと思っているお料理です。
6人が集まる予定のパーティーにはある程度の量が必要だな…だったらどうせなら味くらべをしてみようかしら!
ということで、IKEA に売っているSILL DILL(シル・ディル)という瓶詰めのニシンの酢漬けをアンチョビの代わりに使ったヤンソンさんの誘惑も作ってみることに!
どうしてどこにもレシピとして紹介されていないような独自のチャレンジをしてみることにしたのかと言うと、スウェーデンのアンチョビ缶詰のことを色々調べる流れで見つけたこのSILL DILL も、缶詰とはきっとまた別物ながら、少なくとも同じ種類の魚を使ったマリネではあるぞ、ということに気づいたからです。
SILL DILLのマリネ液の中にはオールスパイスはすでに入っているようなので、追加するスパイスは、シナモンとナツメグだけにすることにします。
さて、どんな違いが出るのでしょうか。
そしてグニラさんからはどんな感想が聞けるのでしょうか!
「ヤンソンさんの誘惑」の作り方
ヤンソンさんの誘惑(材料目安4人分)
|
①じゃがいもは拍子木切りに
②玉ねぎは薄切りに
③じゃがいもと玉ねぎをそれぞれバターで軽く炒める(この時軽く塩こしょうをしても良い)
(じゃがいもは炒めている時に水分が足りなくなれば酒か水を適量加えても良い)
④じゃがいも、玉ねぎ、アンチョビの順に、オーブン用の耐熱皿にそれぞれを層のようにして重ね入れる
⑤その上にまた玉ねぎとじゃがいもを、それぞれまた層のようにして重ね入れる
⑥生クリームと牛乳を一緒にして、追加するスパイスも入れてよく混ぜ(SILL DILLを使う方にはマリネ液も少し混ぜ入れる)、食材の上から流し入れる
⑦パン粉をふる
⑧200°Cに温めておいたオーブンで、焦げ目がつくまで30分程度焼く
やったあ!美味しそうに焼き上がりました!
さあ、「ヤンソンさんの誘惑」を食べくらべてみましょう!
見た目だけではどちらがアンチョビでどちらがSILL DILLを使ったほうか、わかりませんね。
Ancient Pottery の八角形の器は「あんまりたくさんは入らないかな?」という最初の予測をよい意味で裏切って、意外としっかり量が入りました。
味くらべをすることにしたので、器の色が違うのも分かりやすくて良かったです。
そのままテーブルに出しても素敵なのが嬉しい。
さて、肝心の食べくらべをしてみた結果…どちらもとっても美味しかった!どちらも大成功!!
アンチョビのほうはちょっと濃厚でクリーミー。
SILL DILLのほうはほんのり甘みと酸味が感じられ、クリーミーさはありながらも比較的サッパリと食べられます。
そしてどちらも、加えたスパイス類がかなりいい仕事をしている気がします。
グニラさんからも、どっちがいいって言えないわ、とても美味しい、という感想をいただけました。嬉しい!
「ザリガニパーティーに添える料理には、きっと私もヤンソンを選ぶと思うわ、素晴らしいチョイスね!」とのお褒めの言葉も!
ちなみにグニラさんがご自宅でヤンソンさんの誘惑を作る時は、オイル漬けのアンチョビを使って作るそうです。
「確かにスウェーデンの缶詰とは違うけど、でもこっちも美味しいじゃない!」とのこと。
無理をせず、もっと気楽に身の丈の生活をちゃんと楽しむ、相変わらずのグニラさんマインド。さすがです。
そして、おっしゃる通りです!!
「ヤンソンさんの誘惑」はふところの深い料理です
ヤンソンさんの誘惑は、厳密に分量をはからずに、ある程度目分量で作っても、ちゃんと美味しくできてしまうとても優秀なお料理でした。
その日の気分が濃厚なら牛乳は入れず生クリームだけにしてみたり、サッパリめにいきたいなら牛乳や豆乳だけで作ってみたり、スパイスも入れたり入れなかったり、かなり自由に作れちゃう、ふところの深いレシピです。
きっと肉じゃがにそれぞれの家庭の味があるように、ヤンソンさんの誘惑にも、スウェーデンのそれぞれの家庭の味があるのだろうと思いを馳せます。
スウェーデンの定番家庭料理は、今後は我が家の定番料理にもなっていきそうな兆しです。
VIVA ヤンソン!!