FIKA(フィーカ)とは、日本でいう10時や3時の「おやつの時間」のような、スウェーデンの伝統的な習慣です。
仕事中のコーヒーブレイクとして同僚とおしゃべりしたり、休みの日に外でちょっとお茶しよう、なんていうのもスウェーデンのFIKA文化なのだそうです。
グニラさんとのFIKAのおともは、手作りの美味しいお菓子。
コーヒーのおかわりもすすみ、時間が穏やかに流れます。
グニラさんのご自宅は愛着のある北欧のものたちに囲まれて、あれにもこれにも胸がときめいてしまう。その中にはお子様がまだ小さい頃に一緒に作った飾りものや、壁に掛かったたくさんの家族写真(ご主人はフォトグラファーなのです)も混じり、肩肘張らないナチュラルな心地よさが満ちています。
日々の暮らしの楽しさを感じられる素敵なおうちの空間でゆったりと過ごすFIKAの時間。
グニラさんに教わる、北欧のこと、暮らしのこと、ものやインテリアの色々なこと。
自分らしい暮らしのためのヒントや学びを、ゆるり綴っていこうと思います。
*FIKAは日本語では"フィーカ"と表されることが多いですが、スウェーデン語の発音は"フィーキャ"の響きに近いです。
秋らしいFIKAのテーブルセッティング
10月中旬、ピカイチの秋晴れ。
グニラさんの家に向かいながら考えごとをしていたけれど、天気が良すぎて忘れてしまいました。
ご自宅へお邪魔して最初に目にした、庭先の立派なキンモクセイ。
まあるく茂ったグニラさん宅のシンボルツリーは特に剪定もせずにこの形なんだそう!
近づいて、香りを胸いっぱいに吸いこんで。
今年の夏は長かったけれど、ちゃんと秋が来たなあと嬉しくなります。
さて、今回のFIKAのテーブルセッティング。
落ち着いた赤を基調にしたチェック柄のテーブルクロスの上には、キンモクセイよりも濃いめのオレンジ色の取り皿や、太めのキャンドル。
暖かな秋のテーブルコーディネートです。
「今日はこの色にしましょうか。」
マグカップも赤や黄色のものを出してくれました。
ペーパーナプキンの淡いグリーンがさわやかな秋風のように軽やかです。
お皿に沿ってピッタリ添えられたペーパーナプキン。
こんなふうに角を折って置いてくださっているので、使いたい時にスッと取れて便利でした。
ペーパーナプキンって自分のためだけに使うのはもったいなくて、お客様が来てくれた時に出そうと思って忘れてしまうけれど、こんなおもてなしがさらっとできるようになりたいものです。
出窓から入る光に透けるススキにうっとり。
このススキはお散歩の途中で顔見知りのご婦人からいただいたものだそう。日常の中の素敵なギフトですね。
おもちゃみたいなパンプキンもさりげなく並んでいます。
季節を楽しむインテリアのコツを知る
昨年の冬に初めてグニラさんのお宅へお邪魔して以来、春夏そして秋と、季節ごとにお伺いして思ったことは、グニラさんは季節のインテリアコーディネートがとてもお上手、ということです。
家具を変えたり移動したり、といった大きな変化ではなくて、ダイニングや、その隣の出窓、リビングのサイドテーブルの上といった、ゆっくり過ごす場所を中心に、季節の小物、テーブルリネン、季節の草花、キャンドルなどを組み合わせて、座った時に目で見て楽しめるようになっていると感じます。
窓や壁のちょっとしたスペースも、季節ごとにファブリックをチェンジして。
例えば、目に入りやすいキッチンの一角にかかっているクロスの色が変わっていたり、出窓のカフェカーテンも通年白を基調としながらも、季節感のある差し色の入ったものに変えられていたり。
ソファの上のブランケットもさりげなく変わっていたり、といった具合。
そこだけを見ると「あれ変わった?」ぐらいの印象でも、少し引いて全体を見れば、「あれ変わってる!」と雰囲気の変化を感じられます。
掃き出し窓のカーテンを変える、というような大きな空間の作業だと億劫になってしまいそうだけれど、どこかの一角や小さな窓のファブリックやブランケットなら、ハードルがぐんと下がります。
グニラさんにとっては自然な習慣でも、私にとっては真似したいテクニックです。
たくさんのアイテムをどうやって管理しているのか尋ねると、
「この時期はこれを出すって決めてまとめてあるのよ。」と教えてくれました。
ある程度、その季節に使うものをセットにしてまとめておけば、しまう時にも出す時にもわかりやすく、インテリアチェンジがスムーズに進められて良いですね。
季節ごとのそういう作業が当たり前のように身についているグニラさんならではの工夫だと思います。
シンプルで美味しい、スウェーデンのワッフル
「もう生地は作ってあるから、いつでも焼けますよ!」
グニラさんが冷蔵庫から生クリームとジャムを取り出しながら、声をかけてくれます。
今日のFIKAのおともはワッフルです。
私のワッフルのイメージは、ベルギーワッフルと呼ばれるもの。
大きめのデコボコの格子状で、溝のへこみは深めです。
外側は少しかためでサックリ、中はしっとりの食感で、個包装になっているものを買ったり、カフェメニューとして見かけることもあるものです。
「私はベルギーワッフルは日本に来て初めて食べたの。」
と言うグニラさんが用意してくださるスウェーデンスタイルのワッフルとは、一体どんなものなのでしょう。
使うのは丸い形のワッフルメーカー。
スウェーデンではハートが合わさったクローバー型をしたものもよくあるそうです。
日本では四角い形のものが多いでしょうか。
スウェーデンは薄いワッフルが主流。
ワッフルメーカーの内側の溝もかなり浅めに作られています。
でも実はこれ、アメリカで買ったものなのだそう。
スウェーデンで使っていたワッフルメーカーは、コンセントの形状も電圧も異なるので置いてくることにして、日本に移住してから買い直すつもりでいたグニラさん。
ただ当時の日本ではこのようなワッフルメーカーを見つけることができず、寂しい思いをされていたそう。
「そんな時に、よっちゃんが出張先のアメリカのお土産で買って来てくれたのがこれなのよ。」
と、旦那様との素敵な思い出話を聞かせてくれました。
それから30年以上経った今日も、変わらず現役というから驚きです。
ひとかけのバターが溶けたら、生地を流しこみ焼いていきます。
グニラさんの「とっても簡単にできちゃう!」の言葉のとおり、5分もかからずにもう焼き上がり!
「スウェーデンのワッフルは、とってもシンプルなのよね。」
ストロベリーとブルーベリーの2種類のジャムをちょんとつけて、生クリームはたっぷりのせて。
ジャムと生クリーム、両方のせるのがスウェーデンスタイルです。
生地はふわふわで、しっとり柔らかくて、ほんのり甘い。
生クリームとジャムとが相まって、口の中にワッフルの甘さが広がります。
薄いからと言い訳をつけて、あっという間に完食してしまいました。
これは永遠に食べられそう、なんて思っていたら、グニラさんが思い出したように呟きます。
「子どもの頃、私たちが4枚も5枚も食べるから、お母さんはずっと立ちっぱなしでワッフルを焼き続けてくれたのね。申し訳ないことをしてたわね。」
たしかに夢中で食べ続けてしまうのもやむなしの美味しさです。
(優しいグニラさんは、このあとおかわりを焼いてくれました。)
スウェーデンの春と秋はワッフルの季節
イースターの時期の「セムラ」も今回の「ワッフル」も、食べるようになった起源はキリスト教に由来すると言われています。
キリストが生まれた日(12月25日)からさかのぼり、9か月前にあたる3月25日を「聖マリア受胎告知の日」と定め、お祝いしたことから始まります。
Jungfru Maria(聖マリア)の別名「Var Fru(ヴォールフル)」がその響きからだんだん変化して、3月25日が「Vaffeldagen(ヴォッフェルダーゲン)ワッフルの日」と認識されるようになった、とのことです。
この「ワッフルの日」の春先の気候に近いからなのか、少し肌寒くなってきた秋にもワッフルをよく食べる習慣があるのだそうです。
秋の定番メニュー
スウェーデンの秋の食卓には、グラタンのようなオーブン料理が並ぶことが多いそうです。
外も寒くなり、温かい料理が食べたくなる季節です。
10月のスウェーデンはハンティングシーズン。
グニラさんのご実家でも、猟帰りのハンターからオオカモシカの肉をもらい、シチューにして食べたりしていたとのこと。
スウェーデンは世界の中でも狩猟免許を持っている人口が多い国。
猟をすることで、野生動物が増えすぎて森を荒らさないように調節することにもつながっています。
スウェーデンの秋の味覚
きのこは、スウェーデンでも秋の味覚です。
フィンランドが舞台の映画『かもめ食堂』にも出てくる黄金色の「カンタレッリ(日本名はアンズタケ)」は、スウェーデンでも秋の一番人気のきのこのようで、スウェーデン語でも「カンタレッリ」と発音します。
これは10年前の秋に訪れたヘルシンキの市場で売られていたカンタレッリです。
どうです?お宝箱にザクザク入った小判が、黄金色に光っているように見えませんか?
北欧では森でのベリー摘みやきのこ狩りは自由に楽しむことができます。
グニラさんは笑いながら、きのこ狩りの思い出を教えてくれます。
「私は探すのが苦手だったのよ。場所を知っている人も自分だけの秘密の場所なので教えてくれない。買うと結構高いのよ。」
なんだか松茸の話を聞いているみたい。
きのこ狩りで採ってきたきのこは冷凍したり、干したりして保存する人もいるようで、「それは椎茸みたいですね」と笑ってしまいました。
スウェーデンも日本と同じように、たくさんの果物が秋に収穫の時期を迎えます。
りんごや洋梨やプラム、それからベリー類などがそうです。
グニラさんのご実家にはりんごの木があり、収穫して食べきれない分は1年分のジャムにして、朝食のオートミールにかけて食べていたそう。
「ジャムを作る時はね、近所の年配の女性たちと一緒にとにかくずーっと皮を剥き続けるのよ。」
りんごの木の下に座って、楽しくお話ししながら作業する女性たちの光景が目に浮かびます。
ジャムの発祥地は北欧だとも言われているそうで、実際にグニラさんのFIKAのテーブルにもジャムが並ぶことが多いです。ミートボールやポテト、お肉にもジャムを添える食文化があるように、ジャムの存在がとても身近なのだと感じます。
使いながらモノを大事にする
グニラさんに、これはどこで買ったのですか?と聞くと、
「これはいただいたものなのよ。」という返答がたびたびあることに驚きます。
グニラさん自身が厳選して長年使っているものなのだと思っていたからです。
ご家族からの贈り物が多い印象ですが、どれもグニラさんの好みをよく知った上で吟味して贈られているものだと感じます。
これはお姉様や叔母様から贈られたリネン類や、職人のハンドメイドのバスケットやかごの数々。
こういった手がこんでいて高価なものは、自分で買うことももちろんあるけれど、いただいたり、贈ったりすることのほうが多いそうです。
この刺繍はこういう意味でね、と説明しながらリネンを1枚ずつ嬉しそうに見せてくれるグニラさん。
それぞれに思い入れがあり、要所要所で大切に使い続けているのが伝わります。
お気に入りの1枚にシミがついているのを見つけると、落胆するのではなく、
「あらシミがついちゃってるわね、ここだけ漂白しなくっちゃね。」とチャーミングな切り返し。
"日本人のもったいない精神" が知らぬ間に身についてしまっている私が、もったいなくて使えないと思ってしまうことがあると呟くと、グニラさんは優しく、「使う機会がないまましまっておくのももったいないかもしれないわね。」とにっこり。
使うことが『大事にすること』という捉え方で、どんどん使うことでもっと大事にしていけるのかもしれません。きっとそのほうが、モノも人も幸せになれるんじゃないかと思いました。
グニラさんのモノの選び方、使い方
グニラさんの選ぶものは『長く使う』ことが見えているものばかりのような気がします。
置物、花瓶、お皿やカトラリーでも、シンプルなデザインだけれど飽きのこない少しのユニークさがあったり、柄や模様が特徴的なデザインのものも使い勝手のいい大きさや形だったり。
グニラさんのモノたちからは、日々の暮らしの中で、実際に使ったり愛でたりしてきた時間だけが纏わせることのできる、風合いや味わいが漂っているように感じます。
そういう時間をかけて一緒に過ごしてきたモノたちと、季節や暮らしのその時々で、鮮やかさを足してくれるようなカジュアルなアイテムとを、さりげなく上手に組み合わせています。
大きさ違いで並べた秋色のIKEAのキャンドルの隣りに、北欧で人気のある「ERNST」のキャンドルホルダー。
これは筒状のホルダー部分が、正方形の受け皿とマグネットでくっつくようになっていて、キャンドルが倒れにくい仕組みになっているスグレモノ。(しかも受け皿のどこにでもホルダーの位置を動かせます)
そのまま使えばシンプルでスタイリッシュな見た目ですが、受け皿部分に拾った松ぼっくりやきれいな落ち葉など、気分を盛り上げてくれる季節の飾りを入れれば一気に華やかに。
こういうグニラさんのセンスに触れるたび、興味と憧れは増すばかりです。
たくさん持っているリネンは大きさが微妙に異なるので、まずはカゴに入れてみて雰囲気を確認。
カゴにはピッタリのサイズ感のものを敷いたり、大きめのものを少しはみ出させてみたり、自由に使って楽しんでいいんです。
地震大国の日本でも、カゴ類なら大きいものでも安心して高いところに飾れます。
本来の用途として中身を入れて使う時以外はしまいこむのではなく、こうしてカゴやバスケット、それ自体を飾って楽しむ、というのもひとつの使い方ですね。
同じ形のものが並べてあるのも可愛いです。
お気に入りのモノを使う
いつも季節や料理に合わせてさまざまな食器を出してくれるグニラさん。
お客様用と日常使いのものとはそこまで分けず、お客様の人数や季節、その時の気分に合わせて、自由に楽しく使っています。
ぬくもりのある存在感の食器棚の中には、ひとつひとつ説明できるほど使い馴染んだたくさんの食器たち。
少し覗かせていただきました。
FIKAには欠かせない、グニラさん特製のスイーツを取り分けるのに使うトングやサービングスプーン。
お手入れは必要だけれど、複雑で美しい模様の銀のカトラリーたち。
イギリスで購入したガラス製のカップアンドソーサー。
これはアイリッシュコーヒー用で、グニラさんのお気に入り。
取っ手のかたちのユニークな日本製のマグカップ。グッと掴むように持ちます。
ジョッキになりそうなほど大きいですが、この取っ手のおかげでとても持ちやすいのです。
カナダで買ったグラスマーカー。
グラスマーカーとは、パーティーやお茶会など人が集まる場所で、自分のグラスを見失わないためにグラスにつける目印の飾りのこと。
このグラスマーカーには、"Favorite Food" や "Best Joke" など、チャームに書かれたテーマを話さなければならないというお遊びのルールがあるようです。それをきっかけに会話が弾むように、という工夫ですよね。面白いです。
「同じ人たちとの集まりで、何度も "Best Joke" のチャームが回ってきちゃったら困るわね。そのジョークもう知ってる!って言われちゃうわ。」とお茶目なグニラさん。
こだわるし、こだわらない
グニラさんを見ていると、こだわらないというのは「なんでもいい」ということではなくて、好きなものを使っている中でのちょっとしたハプニングも楽しめる、ということなのかなと思います。
ちょっと汚れたけどまあいいか、ひとつ割れちゃったけどまあいいか、といった具合に。
こだわっていると感じるのは、好きなものを選んで使うというところです。
帰り際に出窓の隅へふと目をやると、ハサミ型の鳥のペーパースタンドを見つけました。
こういうものは一期一会の出会いだと思うんです。
グニラさんのように、自分の好きなものに素直でいること、日々の暮らしを楽しむことが、魅力的なものを引き寄せる感覚をくれるような気がしています。
スウェーデン風ワッフルの作り方
グニラさんから教えてもらった今回のFIKAのおとも「スウェーデン風ワッフル」のレシピをご紹介。
スウェーデン風ワッフルの材料
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スウェーデン風ワッフルの作り方
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