ラトビアのスパイスクッキー「ピパルクーカス(Piparkūkas)」を作りましょう
ラトビアの冬の香りを、夏のおやつに
ラトビアの伝統菓子「ピパルクーカス」ってどんなお菓子?
ラトビアの冬の風物詩、Piparkūkas(ピパルクーカス)。
クローブやシナモン、カルダモンなどスパイスをたっぷり使った香り高いクッキーで、クリスマスシーズンになると家族で焼くのが恒例行事なんだとか。
ラトビア語で「Pipar」=ペッパー(胡椒)+「kūkas」=ケーキ/菓子
直訳すると「胡椒のケーキ」ですが、実際には胡椒だけでなく、数種類のスパイスを混ぜた風味豊かな「スパイスクッキー」です。英語で言えば「ジンジャーブレッド」に近い存在。
ラトビアの家庭では、12月に入ると家族でPiparkūkasを焼くのが恒例行事です。
子どもたちと一緒に家族で型抜きをしたり、焼きあがったクッキーにアイシングで模様を描いたりするのも冬のたのしみなんだとか。
時には、固めに焼いたクッキーに穴を開けてリボンを通し、クリスマスのオーナメントにしたり、ビンやかごに詰めて贈り物にする素敵な習慣があるそうです。

先日のワークショップでご近所のパン屋さんBread house nestさん(
@bread_house_nest)が作ってくださったピパルクーカスがあまりにも美味しくて、レシピを教えていただきました。
(もちろんレシピもご紹介していますので最後までご覧くださいね♪)
よく似ているけど、ピパルクーカスとジンジャーブレッドの違いはなんでしょう?
ラトビアの「Piparkūkas(ピパルクーカス)」と、欧米で親しまれている「ジンジャーブレッド」。どちらもスパイスの香る焼き菓子ですが、その背景や味わいにはいくつかの違いがあります。
Piparkūkasは、ラトビアやエストニアなどバルト三国で古くから親しまれてきた冬のお菓子。
名前は「胡椒(pipar)」と「ケーキ(kūkas)」を組み合わせた言葉で、「ペッパークッキー」のような意味合いを持ちます。
一方、ジンジャーブレッドはイギリスやドイツ、アメリカ、そして北欧などで広く知られた存在。
その名のとおり、主にジンジャー(生姜)を使ったジンジャー入りのパンやクッキーのことを指し、使われるスパイスにも違いがあります。
Piparkūkasは、ジンジャー、シナモン、クローブに加えて、カルダモンや黒胡椒といった香りの引き締まるスパイスを使うのが特徴。
これによって、より複雑でスパイシーな風味が生まれます。
一方ジンジャーブレッドは、ジンジャーやシナモン、ナツメグ、クローブなどの甘くやさしい香りが中心で、より親しみやすい味わいです。
食感にも差があります。
Piparkūkasはカリッと固めに焼かれることが多く、時間が経つとしっとりとした口当たりに変わるのも楽しみのひとつ。
ジンジャーブレッドは、サクサクしたものからソフトでふんわりとしたタイプまでさまざまで、アメリカではしっとり柔らかいタイプも一般的です。
甘さのバランスにも違いがあり、Piparkūkasは黒糖や蜂蜜を使った甘さ控えめで香ばしい味わい。
ジンジャーブレッドはやや甘めで、ジンジャーブレッドハウス用にはモラセス(糖蜜)や砂糖が多く使われることもあります。
どちらもクリスマスの時期に家庭で焼かれることが多いお菓子ですが、装飾にも個性があります。
Piparkūkasはハートや星、動物など素朴で温かみのあるかたちが多く、時にはリボンで吊るしてツリーの飾りにすることも。
一方のジンジャーブレッドは、「ジンジャーマン」型やジンジャーブレッドハウスなど、よりデコラティブで遊び心のある装飾が親しまれています。
こうして見比べてみると、どちらのお菓子もそれぞれの土地や文化の空気をまとっているように感じます。そしてどちらも、冬のキッチンに、あたたかな香りと家族の時間を連れてきてくれる存在です。

本来は12月、クリスマス前の家族行事として焼かれるものですが、今回は季節を飛び越えて、 アイスクリームに添えてたのしむ“夏のアレンジ”にしてみました。
季節にとらわれず、暮らしをたのしむ、「くらすかたち」らしい夏のピパルクーカスです。
それでは気になるレシピといきましょう。
「ピパルクーカスの作り方」
ピパルクーカスの材料(約50枚分)
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え、結構水分量多くない?固まるの?と思いますが、心配ご無用!
しっかりと固まって型抜きしやすい生地になりますよーっ
①鍋にバター、砂糖、蜂蜜を入れて弱火でゆっくり溶かす。
②火を止め、粗熱をとったら卵を加えてよく混ぜる。

③別のボウルに小麦粉、ベーキングソーダ、スパイス類、塩を合わせておく。
④③の粉類をバター液に少しずつ加え、ゴムベラまたは手でこねてひとまとまりにする。
生地をラップに包み、冷蔵庫で一晩(最低でも4時間)寝かせる。
※今回のアレンジレシピ:時間の関係上1時間しか寝かせられませんでした。しっかりと冷やしたいので、先にめん棒で5mmほどの厚さに伸ばした状態で冷蔵庫に入れています。
⑤冷えた生地を取り出し、打ち粉をして3〜5mmの厚さに伸ばす。
⑥お好みの型で抜き、クッキングシートを敷いた天板に並べる。
⑦180℃に予熱したオーブンで7〜10分ほど焼く。(縁がほんのり茶色くなったらOK)
※オーブンによって焼き加減が異なりますので、ご家庭のオーブンに合わせて様子を見ながら焼きましょう



ここからはお好みですが、ぜひアイシングに挑戦してみてほしい!
⑧粉糖にレモン汁(または水)を少しずつ加えて、好みの硬さに調整し、クッキーが冷めたらアイシングでデコレーションする。(緩すぎるとクッキーの上ででろーんと広がってしまうので、すくって落としたアイシングがツノになり、そのままの形をしばらく保つくらいの固さがちょうどよいです。)
今回は、OPP袋の先端をほんの少し切って小さな絞り袋を作りました。
みんな初めてのアイシングにドキドキ。
慣れるとさくさく描けるようになり、ああでもないこうでもない言いながら、個性豊かなスパイスクッキーができあがっていきます。
さて、まちに待ったいただきますの時間
焼き立てはサクサク、時間が経つほどにしっとりさが増します。
Bread house nest さんいわく、時間が経つほどにスパイスの香りがなじんで味が深まるのだとか。むしろ「冷めてからが本番」なんて思ってしまうほど、おいしさがじんわり広がります。
仕上げのアイシングは水で溶かすと甘みが増しますが、今回はレモン汁で作りました。
ラトビアではレモンティーやヨーグルトと一緒に食べる人もいるようで、ピリッとしたスパイスの風味とレモンの酸味がこれまた相性抜群なんです。
控えめな甘さがちょうどよくて、ひと口食べると「もう一枚」とつい手がのびてしまいます。食感も香りも心地よく、どこか懐かしいような、でも新しいような…そんなクッキーです。

クリスマスを連想するスパイスクッキーですが、「せっかく夏に作るのだから」と、思い付きで砕いたクッキーをバニラアイスに混ぜてみました。
これが想像以上にぴったり。
スパイスの香りと冷たいアイスが口の中で溶け合い、新しいおいしさに出会えました。

生地を寝かせる大切さ
今回、寝かせる時間がかなり短かったのですがおいしく焼くことができました。
ですが、少し余った生地を次の日まで寝かせて焼いてみたら、よりサクッと食感の良いクッキーが焼きあがりました。
そもそも、「生地ってなんで寝かせないといけないのよ」って、ズボラなわたしは思ってしまうのですが、食感が違ったり、コクや香りがアップしたりと大切な理由があるんです。
香りを引き立たせたいスパイスクッキーはなおさら長い時間をかけて寝かせた方がいいみたい。
最低でも4時間、時間がない方は薄くのばしてから冷蔵庫に入れると早く冷えて効果的です。
小さなかごに入れて、大切な人へ

焼き上がったピパルクーカスを、小さな手編みのかごに入れてみたり、ガラス瓶に入れてリボンを結んだり。ラッピングを考える時間も、どこかワクワクしてしまう——そんなひとときを楽しんでみてください。
まるでラトビアの冬のひとこまを切り取ってきたような、温もりのある贈り物になります。
オーブンから立ちのぼるスパイスの香りは、どこか懐かしく、暮らしの中にやさしく溶け込んでくれます。
ラトビアで大切にされてきたこの焼き菓子には、家族や友人と囲む食卓に、自然と笑顔を広げる力があるようです。
ひとつひとつ丁寧に型を抜いて焼く時間は、あわただしい毎日のなかで、手を動かしながら心を整える静かなひととき。
季節を問わず楽しめる、小さな異国の焼き菓子。ラトビアの人々のように、日々のなかに「手づくりの時間」をそっと取り入れてみてはいかがでしょうか。
お子さんやお友だちとの休日のおやつ時間に。ぜひ、気軽に作ってみてくださいね。